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2026.06.26
受け取った想いを次の誰かへ 新作能「長崎の郵便配達」(2026年6月号中区・西区版)

国や世代・時を超え拡がる想い
長崎で被爆した谷口稜曄さんと、元英国空軍大佐でジャーナリストのピーター・タウンゼント氏との交流を、娘イザベル・タウンゼントさんの視点から描いたドキュメンタリー映画「長崎の郵便配達」(監督・撮影 川瀬美香)。国や世代を超えて受け継がれる人と人とのつながりは、多くの人々の心を動かした。
かねてより川瀬監督と親交のあった大鼓奏者・大倉正之助氏もその一人だ。同作品に深く感銘を受け、「この物語を能として伝えたい」と新作能「長崎の郵便配達」を発起した。舞台を勤めるのは能楽師の加藤眞悟さん(よこはま能の会実行委員会顧問)。日本に生まれ、平和な時代を生きる私たちが、過去の記憶と向き合い、未来へ手渡していくための新たな表現が生まれた。
平和への願いを能に託して
大倉氏の想いに共鳴した加藤さんの心に残ったのは、戦争そのものではなく、人と人とのつながりだった。「ピーターさんがいて、イザベルさんがいて、監督がいて、たくさんの人の想いがつながっている。そのつながりを絶やさず伝えていくことが大切だと思いました」。
今回の能では、あえて現代語を取り入れた。80年前の出来事を遠い歴史ではなく、今を生きる人々が自分事として受け止められるようにとの思いからだ。
「1945年5月、横浜は大空襲に見舞われ、多くの市民が命を落としました。被災しても立ち上がり、土地を愛し、復興してきた人々がいます。どちらが正しい、間違っているという話ではなく、平和について改めて考えるきっかけになればと思っています」。
能をもっと身近に感じて欲しい
加藤さんは7月19日㈰に神大寺地区センターで、新作能「長崎の郵便配達」の演目解説講座も開催。10年以上続く勉強会を一般公開するもので、能独特の動きや言葉、台本の読み方、劇中で使われる楽曲の意味などを分かりやすく紹介する。「能だけを観るのも面白いですが、事前に学んでから観ると楽しみ方が広がります。皆さんお好みの、それぞれの形で能に親しんでいただければありがたいですね」。
受け取った想いを次の世代へ手渡していくこと。それぞれが自分でできる役割を果たしながら支え合う、大倉氏の理念「ひとり一役」。映画から生まれた新作能は今、新たなつながりの輪を広げようとしている。


