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2023.07.28

関内まつりで「地域貢献」関東学院大学(2023年7月28日号中区・西区版)

関内まつりで「地域貢献」関東学院大学(2023年7月28日号中区・西区版)

 4年ぶりの開催となる関内まつりには、4月に横浜・関内キャンパスがオープンした関東学院大学の地域活動に高い関心を持つ学生が参加する。関内地区の活性化のための一大イベントである関内まつりが関東学院大学生の参加によって新しい側面を形成できることになる。同大学は「地域連携教育」を標榜し、これまでも金沢区や横須賀市などで多くの実績を残している。今後、関内地区の再開発が進むと同時に同大学の地域連携教育の躍進が期待されている。

関東学院大学と関内地区の縁

 関内まつりとは厳島神社例大祭の祭礼関内まつり・関内神輿渡御式のこと。関内地区連合町内会(会長=新田東一)が主催して執り行う。同会は関内地区の8団体(常盤町町内会、住吉町町内会、相生町町内会、太田町町内会、弁天通町内会、海街自治運営会、シャレール海岸通自治会、UR海岸通アパート自治会)で組織されている。運営は関内まつり実行委員会(委員長=中谷忠宏)が設置され、馬車道商店街協同組合、一般社団法人関内まちづくり振興会、セルテ(日本開発株式会社)の共催により開催される関内地区の一大イベントである。そこに関東学院大学の学生が加わることにより一層地域の盛り上がりを見せることになる。

 関東学院大学と関内地区との縁は10年前に遡る。2013年に横浜ウォーカー(KADOKAWA刊行)とコラボした「横浜学」の公開講座が40回開講された。2020年に終了後、続いて神奈川新聞社と連携して「関内学」を開講。これは横浜開港当初から現在に至るまで関内地区の経済を生み出し、街づくりに貢献してきた老舗企業のTOPが関内について語る8回の講座。学生たちと地域住民がともに地元への理解を深める機会が与えられた意義深いものであった。

関内キャンパスは市民開放エリア

 これまで関内地区は文教機能が希薄であったが、関東学院大学の進出によって「知の拠点」ができあがった。今後、新しい視点に立ったセミナーやシンポジウムの開催が予定されている。まず開校記念シンポジウム「ヨコハマから未来へ。~これからの多文化共生を考える~」と題して4回にわたって行われる。会場は同校キャンパス内2階の「テンネー記念ホール」。ホール名のテンネーは、関東学院設立者のひとり、チャールズ・B・テンネーから付けられた。このホールは2階、3階が吹き抜け空間になっている。最大収容人数654名可能で、講演会やコンサートにも利用できる多目的ホールである。

 このように関内キャンパスは「市民開放エリア」が設けられている。一般の人たちが気軽に利用できるキャンパスなのだ。1階の「ネーサンコーヒー1884」は関東学院の前身横浜バプテスト神学校の宣教師ネイサン・ブラウンに因んで名付けられたカフェ。健康志向のグルテンフリーのフードを中心に提供される。その他1階にはクライミングウォールとランニングステーションがあり、スポーツ拠点として展開され、ランニングイベントなどが定期的に開催される予定だ。4階にはコワーキング・スペースが設けられている。大学と企業、自治体が出会い、活動の拠点となりうるスペースだ。5階にはデジタル図書室。ここも市民に開放されている。デジタル図書と約1万2000冊の蔵書が閲覧できる。ビジネスや経営、コミュニケーションなどに関する専門図書やデジタル化された書籍を利用できる。地下1階は、「ベーコンブックス アンド カフェ」。関東学院大学と株式会社有隣堂が連携して、こだわりの選書展開する市民の知的交流の場である。店名は「知は力なり」の格言で有名なイギリスの哲学者フランシス・ベーコンに因んで名付けられた。もうひとつ、ベーコン料理を筆頭にこだわりの食材による料理の提供もしている。夜間はアルコールの提供もあり、地域住民の憩いの場、懇親の場としても活用できる。

充実した地域連携活動

  関東学院大学の地域連携活動の実績をみると、金沢区で活発に行われている。区内には同大学の他に横浜市立大学があり、「キャンパスタウン金沢」として行政との連携や情報の共有などが密に行われていて、その成果が街づくりに反映されている。「地域づくり金沢フォーラム2023」では、金沢区の交通課題の調査と改善策の提案、区内歴史的景観の調査、地域資源の発見と理解に向けた活動など。京浜急行電鉄と京急百貨店の協力により、経営学部の学生たちがビジネスプランを立ち上げた。「地産物を地域の人に届け、地域の魅力をもっと知ってもらいたい」という思いから三浦の野菜を京急上大岡駅で販売する学生マルシェを開催。

 また建築・環境学部の酒谷研究室(酒谷粋将准教授)では、金沢区小泉(こずみ)地区(釜利谷東1丁目)の活性化を目指している。現在、築50年で約10年間空き家状態だった建物のリノベーションプロジェクトに取り組んでいる。同学部の学生3名が入居し、1階のリビングやキッチンの共用部を同地区の人々との多世代交流拠点として活用している。このような活動は教育活動の一環として行われ、地域をフィールドとした学びを通じて学生が社会課題に直接触れ、地域との交流を深め、継続性を生み出していく。

 全国的に見ても少子高齢化社会になり、今後も空き家問題は深刻化していくだろう。学生の新しい視点からの課題解決に地域からも期待の声が上がっている。

新しい街の担い手に

  JR関内駅周辺の再開発が進んでいる。ホテルをはじめとしたレジャー施設から観光バスターミナル、オフィス棟を含めた超高層複合ビルが2026年春に完成することになる。これに伴い、人の流れが大きく変化し、さらに新たなコミュニティーの場が生まれるだろう。横浜スタジアムから来年完成予定の「横浜BUNTAI」を結ぶ「みなぶん通り」の歩道が拡幅され、広場と歩道が一体化し、関内地区の街の様相が一変する。

 関東学院大学としても駅前の立地を生かした社会連携拠点の充実を諮るところである。同大学11学部全体で活用していくという。スポーツイベント、ミュージックイベントなどの各種イベント時の人々の動き、港や周辺の観光施設への人の流れの観察を通じて、多様な地域性について考えていく必要に迫らわる。また学生たちの未来へ向けた新しい研究課題を発見していくことだろう。学生たちの新しい感性で、新たな都市構造の仕組みや地域のあり方について学び、提案し、実現に向けて地元自治会町内会及び自治体との連携を深めてもらいたいものだ。

小山 嚴也(こやま よしなり)さん関東学院大学 学長

社会連携教育について

 関東学院大学では、「社会連携教育」を標榜し、地域や自治体、企業などと連携しながら、学生が実際の社会課題を学ぶことで、教室の講義で学ぶ理論やモデルへの理解を深めていく教育活動を積極的に推進しています。  

 横浜の街をフィールドとしたこれらの学びを進める中で、大学と市民の皆さまとの連携や交流がさらに発展していくことを願っています。

 また、大学の関内進出にあたり、3300名の学生が修学することにご期待頂く声を多数頂いておりますが、地域に大学が出来る価値は、多数の学生が通うキャンパスが出来ることではなく、地域に「知の拠点」が出来ることであると考えます。様々なセミナーや講座、シンポジウム等を通じて、大学の「知」を地域に発信していきますので、市民の皆さまの知的活動の拠点としても、大学のキャンパスを活用して頂ければと思います。

学長写真(差し替え)